以下、新聞記事より。
シニアを呼ぶ山歩き
降り注ぐ日光を受けた薄黄緑色の若葉がまぶしく輝く。自然を訪ねるには最適な時期になった。団塊世代の大量定年退職が始まった今春、初めて山に向かうという人も多い。福岡市の電気機器メーカーのOB四人組は山歩きを通して写真や料理など趣味を広げ、初心者向けのガイド本もまとめた。山を楽しむキーワードは「のんびり無理せず」だ。(福間慎一)
「山は体をつくり、感性を刺激してくれます」。そう話す小林正勝さん(65)=佐賀県鳥栖市=ら四人は1956-60年に同じ会社に入社した。高度成長期に鳥栖の工場で共に汗を流し、同じ寮で親しくした仲だ。
02年に退職した小林さんは、毎日が日曜日という状態に落ち着かず「何か、せないかんな・・・」と思っていたときに、元同僚の小畑弘隆さん(66)の趣味が山登りだったことを思い出した。「健康にも良いぞ」と仲間で話し合い、月に2回ほど山に出掛けるようになった。
「九州百名山」(山と渓谷社刊)の山々の登頂を中心に活動し、百のうち八十七山に登った。小畑さんは振り返る。「みんな当初は登って下りるだけだった。でもだんだん楽しむ余裕が出るにつれ、いろんな趣味がくっついてきました」
のんびり、趣味も広がる 定年4人がガイド本
写真は漠然と撮影せずに構図や被写体を工夫する。道中の風物をちょっとした俳句に詠む。草花の名前にも詳しくなった。山頂では持ち寄った食材でちょっとした料理を楽しむ。活動をインターネットで公開するためにホームページも立ち上げた。それが書籍編集者の目にとまり、ガイド本の出版につながった。
「友遊山歩きの会」としてまとめた本は六十一山を取り上げ、コースや歩行時間、見どころやトイレの場所などを網羅する。「通れるはずの林道が台風被害で不通だった」「似た地形でコースを外れた」といった自分たちの失敗も紹介し、対処法を記した。
多彩な趣味ができたとはいえ、四人にとって最も大切なのは健康作りだ。「山では自分たちよりもはるかに年長の人が、はるかに早いペースで登っているんです」。小林さんたちはそんな諸先輩の姿に刺激されている。家族の理解を得ることも忘れてはいない。四人はスケジュール表をメールでやりとりして共有し、活動計画を立てる。木曜日は「家庭の日」として山の予定を入れず、買い物を手伝うなど家庭を最優先させている。
「退職後は家にずっといても、出っぱなしでもダメみたいです」。誰ともなく語った一言に、四人は大きくうなずいた。
「友遊山歩きの会」による初心者グループ登山のポイント
- 本やネットでの下調べだけでなく、現地の自治体や土木事務所などに問い合わせて状況を把握しておく
- スタートからむやみに飛ばさない。時間に余裕を持ち、息切れしないようにのんびり歩こう
- なるべく一人は経験者を加え、一番体力のない人のペースに合わせる
- 水分補給は小まめに。汗が多くなるときはお茶ではなく、スポーツドリンクを持参する
- 登る前に準備体操をしっかりしておく。登りよりも、油断しがちな下りでのけがに注意
- いざというときに連絡が取れるよう、携帯電話の充電を忘れずに
「のんびり行こう!九州山歩きガイド」(メイツ出版)はA5版、144ページ。
価格は1575円(税込み)。平成19年4月25日 西日本新聞
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